2021年5月26日

シャントトラブルについて②


前回に引き続き、シャントトラブルについて説明いたします。

今回はあまり聞いたことのないのではないかと思われます項目にも
触れていきたいと思います。


○静脈高血圧症

シャント側の上肢全体、または一部が腫れてくる病態を静脈高血圧症と言います。
シャント静脈が狭窄したり一部が閉塞すると、シャントの流れが心臓に戻らず逆流し、
うっ血している状態になります。
閉塞する前に対処する必要があり、症状が強い場合は一旦シャントを閉塞して
反対側にシャントを作成する必要が出てきます。


○スチール症候群

シャント側の手指の血流が低下して手指の冷感やしびれや痛みを伴い、
重症になると手指が壊死する疾患です。
シャント作製により吻合部から末梢の動脈血流が障害される病態をいいます。
動脈血がシャント吻合部から静脈に多く流入するため、
動脈血がシャントに盗まれる(盗む= steal)という意味からこの名称がつきました。
動脈硬化が強い場合や手術時の動静脈の吻合径が大きい場合等に起こります。


○感染症

多くは透析終了以降で、感染を生じると翌日ぐらいから穿刺部の痛みを自覚し、
赤味を帯びてきます。感染では早期の治療が必要で、
軽度の感染であれば抗生物質を投与するだけで改善することもあります。
ただ人工血管に一度感染すると薬ではなかなか治らず外科治療が必要となります。

また、感染を放置しておくと細菌が人工血管の壁を通して血管内に入り込み、
敗血症をきたすことがありますので要注意です。
敗血症は命にかかわる重大な病態ですので、
穿刺部が赤くなっただけと考えずにすぐに治療を受けてください。

穿刺するシャントだけでなく、免疫力が低下していると
閉塞して今は使っていない人工血管でも感染することがあります。
普段と様子が違うと感じたら気のせいと思わず受診するようにしましょう。


以上が考えられるシャントトラブルになります。

シャントそのものが元々人体にはない血液の流れですので、
ある程度の変化などはやむをえないものです。
管理が不十分ですと、命綱であるシャントそのものの寿命を縮めてしまいます。


ではどのような点に気を付ければよいのでしょうか?

次回は気を付けていきたい点について説明していきます。

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