前回に引き続き、透析による合併症について説明していきたいと思います。
5.感染症
透析患者は一般に感染に対する抵抗力が低下しており、感染症にかかる割合が高いです。
穿刺部から細菌が侵入して起こるシャント感染、尿量が少ないために起こる尿路感染、
風邪をこじらせて起こる肺炎、結核、輸血によるウイルス性肝炎などがあります。
6.二次性副甲状腺機能亢進症
腎不全になると、リン(P)が腎臓で排泄されなくなり高リン血症になります。
リンが上昇すると腸でのカルシウム(Ca)の吸収が悪くなり、
血液中のカルシウムの濃度が下がってしまいます。
そのため、カルシウム濃度を上げようとして
副甲状腺という器官から副甲状腺ホルモン(PTH)という物質を分泌します。
副甲状腺ホルモンは、骨を溶かして血液中の
カルシウム濃度を上げようとする働きがあります。
この現象が続くともろくて骨折しやすい骨となります。
7.アミロイド骨関節症
長期間透析を続けていると、アミロイドという物質が骨や関節に沈着し、
骨や関節、肩や首などの痛み、しびれ、麻痺などの症状が出ることがあります。
8.高カリウム血症
果物、生野菜、肉や魚の生ものなどカリウムを多く含む食品を摂りすぎると発生します。
症状は、手足のしびれ、重い感じ、口のしびれ、
脱力感、知覚異常、味覚異常、違和感などがあり、
さらに血液中のカリウムの値が上がると脈が乱れ、
心臓が止まることもあり大変危険です。
また、便秘や下痢、食欲不振などによるカロリー不足、
体内での出血、発熱、透析不足などでもカリウム値は上昇するので注意が必要です。
9. CKDに伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)
CKD(慢性腎臓病)の進行にともなって起こる、ミネラル代謝異常を現す全身性疾患です。
腎臓は、ミネラル代謝調節に大きな役割を果たしているため、
腎臓の機能が低下すると現れます。
血中のカルシウムとリンは相互にコントロールし合っています。
カルシウムの濃度は副甲状腺ホルモン(PTH)と
活性型ビタミンDによりコントロールされています。
腎臓の機能が低下すると、この相互関係がうまく機能しなくなり、
PTHが過剰に分泌され骨が溶け骨折しやすくなったり、骨や関節が痛くなったりします。
PTHの過剰分泌によって骨から溶け出したカルシウムが
リンと一緒になって血液の壁に付着し、血管の石灰化を引き起こします。
血管の石灰化は心血管系合併症の原因にもなり、生命予後に影響を及ぼします。
以上9つが主たる合併症であると思われます。
これらの他にも、心不全や脳血管障害、閉塞性動脈硬化症なども挙げられます。
合併症を引き起こさないためにはどうしたらよいのかを、次回説明していきます。