2021年9月22日

腎不全で起こる変化③

今回も引き続き、透析患者に起きる体の変化についてお話していきたいと思います。
尚、過去の記事については、下記リンク部分をご参照ください。



【変化⑦】喉が渇く
通常人は喉が渇くと、生理的欲求として水分を摂ります。
暑さや運動で汗をかいて脱水になるとのどが渇きますが、
塩辛いものを食べたときも喉が渇きます。
そして、十分に水分を摂るとのどの渇きはおさまり、
やがて余分な水分や塩分は尿として排出されます。

透析患者も、喉が渇いて水を飲む仕組みは
健康な人と同じですが、腎機能が弱いため、
各種ホルモンによる水分・塩分の
尿中排泄の調節が機能しません。

つまり、健康な人の口渇では発汗などによる脱水など、
体液中の水分量不足による血液濃縮の場合も多いのに対し、
透析患者の口渇は塩分摂取量に最も影響され、
体液量や水分量が不足している場合は稀です。
そして、細胞がある一定の領域になるまで喉が渇き続けるため、
塩分を多く摂るほど体液も増加し、高血圧や浮腫、心不全の原因となります。

また、透析間体重増加量が多いと、透析困難や
長期的には心血管系合併症のリスクとなります。
そのため、塩分制限は大変重要で1日の食塩摂取量を6g未満に抑えることで、
喉の渇きや飲水量をコントロールし、より安全で快適に透析を行うことが出来ます。



【変化⑧】骨がもろくなる


腎臓は、骨・副甲状腺・腸管と協力してカルシウムや
リンなどのミネラルの代謝を調節しています。
透析患者の方は腎機能が弱いため、
腎臓でビタミンDを活性化することが出来ず、
腸管からカルシウムを吸収することが出来なくなります。

これにより低カルシウム血症になり、
副甲状腺が刺激されて副甲状腺ホルモンが分泌され、
骨が溶けてもろくなります。


透析患者の骨折リスクは、一般人と比較して大腿骨頸部骨折では4.9~6.2倍も高く、
生活の質のみならず生命予後にも大きな影響をもたらします。
原因として、慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常に加え、
尿毒症など透析療法に起因した様々な要因が考えられます。



【変化⑨】透析後の頭痛・吐き気


血液透析を新たに始める際の合併症として、
代表的なものに「不均衡症候群」があります。
透析後半から終了時にかけて、頭痛や吐き気が起こります。

重篤なものは痙攣・振戦・意識障害・視力障害・興奮などの
中核神経症状や、全身倦怠感・筋痙攣・血圧低下・
不整脈などの全身症状を認めます。
通常は一過性で、数時間から長くても
24時間以内に消失します。


不均衡症候の原因は、血液側と脳脊髄液側の浸透圧の不均衡で生じる
脳浮腫による頭蓋内圧の上昇です。
発症した場合は対症療法が原則ですが、
重篤な場合は透析を中止せざるを得ない場合もあります。

しかし最近は尿毒症が軽度の状態で透析が導入されることがほとんどで、
また不均衡症候群の対策も周知されてきているため、
重症化する患者は減ってきています。


今回は透析を行っていくと起こる体の変化として、
喉が渇く、骨がもろくなる、透析後に頭痛や吐き気が起こることがあることを
お話させて頂きました。

今後も引き続き体の変化についてお話させて頂く予定ですので、
どうぞよろしくお願いします。

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